内閣総理大臣認定:適格消費者団体 特定適格消費者団体 特定非営利活動法人 埼玉消費者被害をなくす会
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埼玉県住宅供給公社
「特定優良賃貸住宅の明け渡し時の原状回復条件」で前向き回答
〜消費者契約法の不当条項の疑義で公社に申し入れと懇談の結果を公表〜


 埼玉消費者被害をなくす会(本部:さいたま市浦和区、池本誠司理事長)は、2007年3月に、埼玉県住宅供給公社(本部:さいたま市浦和区、水島茂理事長)が管理する特定優良賃貸住宅を退去した消費者からの情報提供を受けました。なくす会内部で検討した結果、「賃貸住宅の明け渡し時の原状回復条項が消費者契約法において不当条項と考えられる可能性がある」と判断し、調査・検討を重ねるとともに、10回をこえる申し入れ・回答・問い合わせ・懇談・協議を経て、2009年1月13日付で「具体的対応を行う」という回答があり、3月9日に懇談した結果、下記の内容確認することができましたので、協議の経過と現段階の到達点を公表いたします。

  埼玉県住宅供給公社のHPの関連情報はこちら(特定優良賃貸住宅のページにリンク)
埼玉県住宅供給公社は特定優良賃貸住宅、一般賃貸住宅の完成後、入居者の募集、家賃収納から建物の維持管理まで一切の管理業務を行っています。


<これまでの協議経過>

原状回復条件の内容変更を求めて
埼玉県住宅供給公社へ申入れ・懇談を行いました

2009年6月

 埼玉消費者被害をなくす会では、2007年3月に埼玉県住宅供給公社が管理する「特定優良賃貸住宅」(以下特優賃)を退去した消費者から情報提供を受け、賃貸住宅の明け渡し時の原状回復条項が消費者契約法において不当条項と考えられる可能性があるため、調査・検討を重ねてきました。その結果、2007年10月から、問合わせと申し入れを行いました。

 当会からの再度の申し入れに対し、2009年1月13日付で「具体的対応を行う」という回答があり、3月9日にその内容をふまえて懇談を行いました。

なくす会が問題としている点

 埼玉県住宅供給公社が管理する「特定優良賃貸住宅」の契約時の書類は、国土交通省が発行している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(以下ガイドライン)に準拠していないと判断できる項目がある。

≪主な理由≫
 特定優良賃貸住宅は、『埼玉県と国が家賃の一部を一定期間補助することにより家賃負担を軽減』し、公社が管理を受託している賃貸住宅である。

 「ガイドライン」によれば、賃借人の故意・過失・不注意による損耗は、賃借人が負担すべき費用であるのに対し、賃借人の故意・過失等によらない通常損耗/自然損耗についてと次の入居者を確保する目的で行う設備の交換や化粧直し等は、賃貸人が負担すべき費用であるとの考え方を示している。この考え方に準拠すれば、襖や障子、畳の表替、床、クロスは、賃借人の故意・過失等による損耗でない限りは、賃貸人が負担すべき費用ということになる。

 民法の定めにおいても賃貸物件の通常損耗は賃料によってまかなわれるものとされており、賃借人が負担すべき修繕対象には当たらないと解される。

 現状の公社の「費用区分負担一覧表」には、これらの修繕費用を賃借人が常に負担しなければならないと読める規定があり、民法の任意規定や原状回復ガイドラインに反し、賃借人にとって一方的に不利な規定であり、消費者契約法第10条に違反すると考えられる。

 特優賃の管理を行い、契約時書類を提供している公社においては、公的補助が出ている観点からみても、該当書類にあたる「修繕費等の費用区分負担一覧表」の原状回復の内容を、「ガイドライン」に準拠したものに変更するべきである。

懇談の結果、明らかになったこと

  (1)
公社が管理している住宅のうち、国土交通省の「ガイドライン」に準拠していない住宅は、平成17年2月以前に管理受託をした特優賃202団地4,522戸がある。
(2) オーナーに対しては、過去に県からの通知3回、公社からの通知を2回と啓蒙的な活動を行っているが、ガイドラインに準拠する内容に変更した住宅に関しては1件もない。
(3) 少額訴訟の事例(公社は間に入らない)は、他県ではオーナー側が負けるという例もある。県内では申立て・和解後も改定前の費用負担区分を継続使用している。

公社のスタンス

 引き続きオーナー側への働きかけを続けるが、公社側としては強制できない。
 また、特優賃の制度的な問題もあり、ガイドラインに準拠することでオーナーの費用負担が増加するため、オーナー側の理解を得るのはむずかしい。

なくす会の見解

  特優賃に公的補助が出る以上、適正な契約条件で無ければいけないというしばりが補助金の条件であるはずだが、建築時だけでなく、途中契約を継続する場合も適正な契約条件であるという条件付けがあるのではないか。
公社とは今後も状況の経過について情報をもらい、県内全体のトラブル防止を目指し県や公社とも協力していく。
賃貸トラブル防止の条例制定などを視野に入れて検討していく。

<この間の経過>

年月日 文書名 問合せ・申し入れの内容等
2007/3 特定優良賃貸住宅退去者から情報提供あり
2007/3〜10 活動委員会・検討委員会にて、調査/検討を行う。
2007/10/30 問合わせ (1)契約書・原状回復の表記は自然損耗も含まれるのか(2)明渡し時の費用/負担の基準はあるのか(3)備品の不具合などは経年劣化が考慮されるのか(4)クリーニングの内容について(5)備品の紛失とは
2007/11/6 公社からの回答 (1)通常使用に伴う損耗も含まれる場合もある(2)一覧表に準拠だが、賃貸人賃借人の合意の下(3)過失の有無に関わらず一覧表に則る。交換は費用実費負担(4)通常使用でも専有部分は負担。賃借人が業者選定は可能(5)玄関の鍵・クーラー取り付け口の蓋等
2008/2/22 問合わせ (1)オーナー負担分が居住者負担となる場合の解釈について(2)畳の原状回復についての解釈(3)経年劣化や第3者による破損の場合の費用負担について
2008/3/7 公社からの回答 (1)双方合意で負担(2)ガイドラインに準拠していない(3)最終的には甲乙協議の上決定(但し入居時に住宅確認した上で入居している)
2008/4/1 申し入れ 「修繕費等の費用区分負担一覧表」の原状回復の内容について、「ガイドライン」に準拠したものに変更を要望
2008/4/30 公社からの回答 変更の申し入れは「賃貸人と協議」し対応していく。
2008/7/23 回答書に関して問合わせ (1)賃貸人と協議とはどういうことか(2)主導して変更はできないのか(3)契約書の利用状況について
2008/8/5 公社からの回答 「賃貸人と協議」し対応していく。
2008/8/29 連絡文 直接の意見交換の申し出。
2008/12/9 申し入れ 「ガイドライン」に準拠したものに変更することを再度要望。


<この件についての問い合わせ先>
 埼玉消費者被害をなくす会(電話:048−844−8971)

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