適格消費者団体
特定非営利活動法人 埼玉消費者被害をなくす会
埼玉消費者被害をなくす会(以下、当会という)は、消費者全体の利益擁護のために差止請求権を適切に行使することができる消費者団体として、内閣総理大臣の認定を受け、消費者契約法に基づく差止請求関係業務をおこなっています。
本日、2018年7月9日午前、「株式会社ディー・エヌ・エー」(本社:東京都渋谷区、以下、当該事業者という)に対する差止請求訴訟をさいたま地方裁判所民事部に提起しました。その後、埼玉弁護士会館にて、記者会見を行いました。
訴状はこちら【PDF:218KB】
1.差止請求の内容
当該事業者が運営するポータルサイト「モバゲー」のサービス利用契約には、消費者契約法第8条第1項で無効とする内容が含まれている条項があり、該当する規約の使用差止を求めています。請求の趣旨は以下の通り。
1 被告は、消費者との間で、被告が運営するポータルサイト「モバゲー」のサービス利用契約を締結するに際し、別紙契約条項目録記載の契約条項を含む契約の申込又は承諾の意思表示を行ってはならない。
2 被告は、その従業員らに対し、同被告が前第1項記載の意思表示を行うための事務を行わないことを各指示せよ。
3 訴訟費用は被告の負担とする。
2.差止の対象となった条項及びその理由
第4条 携帯電話
3 携帯電話及びパスワードの管理不十分、使用上の過誤、第三者の使用等による損害の責任はモバゲー会員が負うものとし、当社は一切の責任を負いません。
↓
文言上、パスワードの管理不十分、使用上の過誤、第三者使用という事態が生じるに至った責任の所在が限定されておらず、すなわち被告に故意過失がある場合も含め、文言上、「被告が一切責任を負わない」条項であり消費者契約法8条1項1号もしくは3号に抵触する。
第7条 モバゲー会員規約の違反等について
3 当社の措置によりモバゲー会員に損害が生じても、当社は一切損害を賠償しません。
↓
当社の措置をとる事由として、同条1項に「c.他のモバゲー会員に不当に迷惑をかけたと当社が判断した場合」「e.その他、モバゲー会員として不適切であると当社が判断した場合」を含む5つの事由が列挙されていますが、「措置」をとるにあたって、その故意過失に基づき誤った判断をし、その結果、会員に損害を与える事態が生じた場合などを除外することなく、文言上、被告が一切損害を賠償しなくともよいという規定となっており、消費者契約法8条1項1号、3号に抵触する。
第10条 料金
1 モバゲー会員は、当社の定める有料コンテンツを利用する場合には、当社の定める金額の利用料金を当社の定める方法により当社の定める時期までに支払うものとします。また、当社は理由の如何にかかわらず、すでに支払われた利用料金を一切返還しません。
↓
モバゲー内におけるシステムトラブルによる二重課金や、コンテンツ内においてアイテム購入後にアイテムの性能の大幅な変更をすることなど、被告側の過失や債務不履行が想定される事態などを除外することなく、文言上、被告は受領した料金を返還しないという規定になっており、消費者契約法8条1項1号、3号に抵触する。
第12条 当社の責任
4 本規約において当社の責任について規定していない場合で、当社の責めに帰すべき事由によりモバゲー会員に損害が生じた場合、当社は1万円を上限として賠償します。
↓
1万円の支払い対象として、「本規約において当社の責任について規定していない場合」との条件を付しており、そうすると、本件利用規約内で責任を規定している条項、すなわち「一切責任を負わない」と規定している上記条項(同4条3項、7条3項、10条1項)1万円の賠償対象とならないと解釈できる。したがって、同項はその前段部分「本規約において当社の責任について規定していない場合」について、消費者契約法8条1項1号、3号に抵触する。
3.差止請求訴訟までの経過
(1) 当会は、2016年8月8日に同日付で当該事業者に対し、消費者契約法第8条に抵触する可能性があると考えるが、当該条項を定めている趣旨・理由に関し問合せをする「お問合せ」と題する書面を送付しました。これに対し当該事業者からは、指摘された各条項は「責任を負わない旨を定めた規定であり」「債務がないことを確認的に規定する趣旨であり当該事業者の責任は問題にならない」と捉えていること、そのうえで被告に「故意過失がある場合は損害を賠償する」と言う回答がありました。
(2) 回答内容を検討し、2016年12月8日に同日付で、当該事業者に対し「申入書」と題する書面を送付し、主張するように故意過失がある場合には損害賠償責任を負うことを前提とする条項には解釈できない旨を指摘しました。これに対し12月21日付で回答が届き、消費者契約法8条に抵触しないこと、「債務がない場合に債務不履行責任を負わない」、「不法行為が成立しない場合に損害賠償責任を負わない」旨を定めた規定にすぎないため、条項を変更する予定はないとの回答でありました。
(3) 回答内容を検討し、2017年2月3日付で当該事業者に対して「再申入書」と題する書面を送付し、「いかなる責任も負わない」「一切責任を負わない」という文言は、「故意、重過失による債務不履行、不法行為があった場合でも責任を負うことはない」と解釈せざるを得ない旨を指摘し、再度条項を変更するよう申し入れをおこないました。これに対する回答が2017年2月27日付でありましたが、その内容は従前の回答と同様のものでした。
(4) 改善の方向性が示されないことから、2017年7月14日、同日付で消費者契約法第41条に定める書面、具体的には「差止請求書」と題する書面において、本件に関係する条項について使用停止、もしくは適切な条項に修正することを求めました。
これに対する8月4日付での回答内容も従前と同様のものでした。
(5) 現在に至るまで、条項の変更などの対応がされていないことから、差止請求訴訟となりました。
2016.8.8「問合せ」【PDF:165KB】
2016.8.26「回答」【PDF:102KB】
2016.12.8「申入書」【PDF:1.40MB】
2016.12.21「回答」【PDF:78.3KB】
2017.2.3「再申入書」【PDF:615KB】
2017.2.27「回答」【PDF:65.7KB】
2017.7.14「差止請求書」(書面による事前の差止請求)【PDF1.14MB】
2017.8.4「回答」【PDF:170KB】
4.本件の当事者について
原告 特定非営利活動法人 埼玉消費者被害をなくす会
さいたま市浦和区岸町7-11-5
理事長 池本 誠司
原告訴訟代理人弁護士 木下 真由美 他4名
さいたま市大宮区宮町2丁目28番地 あじせんビル4階・6階
埼玉中央法律事務所(送達場所)
被告 株式会社ディー・エヌ・エー
東京都渋谷区渋谷二丁目21番1号
上記代表者代表取締役 南場 智子
5.問合せ
適格消費者団体 特定非営利活動法人 埼玉消費者被害をなくす会
電話 048-844-8972 担当:事務局長 岩岡・加藤までお願いします。
以上
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