適格消費者団体・特定適格消費者団体
埼玉消費者被害をなくす会 理事長 池本誠司
(公印略)
令和元(2019)年7月24日、最高裁第2法廷は、(株)NTTドコモの無制限約款変更条項差止請求訴訟について、本件上告及び上告受理申立を受理しない決定をした。
本件に関する平成31(2018)年11月28日言渡しの東京高裁判決の問題点は、すでに平成31(2018)年11月29日付け声明において指摘しているところである。つまり、事業者が利用している約款を、規定上は変更できる範囲の制限も一切なく、消費者の同意なしに一方的に変更できるという本件無制限約款変更条項は、典型的な不当条項に当たるにもかかわらず、東京高裁判決は、合理的に限定解釈すれば無制限に変更できないから不当条項ではないという理由で差止請求を棄却した。これが正しいのであれば、全く同じ無制限約款変更条項を利用して、消費者に一方的に不利益な契約条件の変更を繰り返しても、当該約款変更条項は差止ができないという不当極まりない結果を招くこととなる。
しかし、最高裁としては、当該問題点について、本件訴訟では判断しないという結論を出したことになる。東京高裁判決の悪影響のおそれを考えるとき、最高裁の本件事案に対する消極姿勢は批判されるべきものと考える。
もっとも、(株)NTTドコモの約款条項は、高裁判決でも、不明確であると指摘されているだけでなく、本年6月15日に施行された改正消費者契約法のもとでは、不明確条項として不当条項に当たる可能性が一層高いものである。今後、消費者に一方的に不利な約款変更が行われるおそれがあるので、引き続き注視する必要がある。既に民事法学者から、東京高裁判決に反対であるとの評釈が公表されているところであり、幅広く議論されることを期待する。
また、高裁判決で指摘されているとおり、個別の約款変更の有効性は、本件約款変更条項が仮に消費者契約法上無効とならないにしても、個別に問題とすることができるから、今後は、無効な一方的約款変更については、なくす会を含む特定適格消費者団体による集団的消費者被害救済のための団体訴訟制度などの利用も検討されよう。
いずれにしても、本件のような約款変更条項は、今後要件や手続き等を具体的に定めたものに変更されていくことが望ましく、その実現のため、類似の約款変更条項については、引き続き消費者団体による是正の申し入れや事業者の自主的是正が積極的になされることを期待する。
以 上 |