内閣総理大臣認定:適格消費者団体 特定適格消費者団体 特定非営利活動法人 埼玉消費者被害をなくす会
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差止請求・被害回復関連

(株)NTTドコモに対する差止請求訴訟控訴審判決を受けて

 

適格消費者団体 特定非営利活動法人

埼玉消費者被害をなくす会

これまでの経過

1.差止請求訴訟の提起(2017年1月25日)

詳細はこちら【PDF:190KB】

2.差止請求訴訟判決控訴(原審:なくす会の請求を棄却)(2018年4月27日)

詳細はこちら

控訴審判決について(控訴審判決:なくす会の控訴を棄却)(2018年11月26日)

1 判示内容

 客観的に合理的な範囲で約款変更ができるという法理は確立しているという判断を前提に本件条項については、客観的に合理的な範囲で約款変更ができるという約款法理を確認しただけの条項であるから消費者契約法10条に違反しないと判示し、当会の控訴を棄却した。

2 原判決からの変更点

(1)原判決は、消費者契約法10条前段の該当性を認めたが、本判決は10条前段該当性を否定した。その違いは、当事者の合意なく約款変更ができるという法理が確立しているか否かについて、原判決がこれを否定したのに対し、控訴審判決は、一定の範囲で約款変更ができるという限度では、法理が確立していると判断したことによる。そして、本件変更条項は、この法理の存在を確認しただけの条項であるから消費者の権利を制限するものではないとと位置づけたことによる。

(2)その他の変更点

上記の点については、原判決の判断から後退したようにみえる。しかし、判決は理由中で原判決の理由にいくつかの変更・訂正を加えており、意義が見いだせるものもある。

(ⅰ)約款変更は、本件約款変更条項を根拠に認められるものではないことに明らかにしている。

⇒「本件変更条項により」を「本件変更条項により確認された約款変更の法理により」に全ての箇所で改めている。

(ⅱ)本件手数料条項が約款変更として認められるかどうかについては判断を避けている。

⇒原判決の本件手数料条項の変更が合理的で正当であったとの判断について、前提となる事実認定部分を含めて全て削除している。今回契機となった約款変更が合理的で許されるという判示部分を敢えて全て削除している点からは、本件手数料条項が合理的であるとは本件訴訟から認定できなかったことを示していると考えられる。

(ⅲ)ドコモの本件変更条項が適切さを欠いている点にも触れている。

⇒本件変更条項は、「当社はこの約款を変更することがあります。この場合は、料金その他の提供条件は、変更が客観的に合理的なものである場合に限り、変更後の約款によります。」という趣旨と解するのが妥当である(ただし、条項自体からは無限定の変更が許されるように読める点からすれば、変更が許される一定の合理的な範囲について、できる限り明確な文言により定めておくことが将来の紛争を防止するためにも望ましいものと思料する。)と判示している。

(ⅳ)文字通り無限定な約款変更を許す条項であれば、消費者契約法10条に違反することを明言している。

「しかしながら、仮に包括的な約款変更条項が、文字通りいかなる変更をも許す条項であれば、消費者の権利を害する不当条項といわざるをえない」(判決文15頁)と明確に判示しており、事業者が自由に約款変更できて、これに消費者が拘束される内容の条項は不当条項であることを理由中で明確に指摘している

(ⅴ)約款変更に当事者が拘束されるためには、約款変更が客観的に合理的であることが必要であると明言し、合理性については客観的なものであることが必要で事業者が合理的であると判断しただけでは当事者を拘束しないことを明言している。

これに関連して原審が公序良俗又は信義則に違反しない限り約款変更が認められるかのように記載してあった部分を削除し、変更を加えている。

(ⅵ)異議のある消費者について解約を認めないことや、違約金で縛ることは、約款変更が認められにくくなる一事情になることを示している。

(ⅶ)本件変更条項が改正民法化での約款変更が認められやすくなるための積極的な意味を持つ変更条項とはいえないが、本件変更条項は、約款が一方的に変更される場合がありうるとの注意喚起的な意義を持つことのみを認めて、その意義があるので「直ちに削除すべきとまでは認められない。」と判示している。本件変更条項については極めて限定的な意義を認めるにとどまっていること。

以上の変更点については、当会の主張がある程度反映されている変更点であると評価できる。とりわけ、ドコモの変更条項について紛争防止のためにより明確な文言で定めるべきと言及している点は、ドコモの変更条項に問題があることを認めているといえ、頑なに変更を拒んでいるドコモに一定の改善を要請する判決であるといえるであろう。

3 本判決の問題点

 一言でいうと、本判決は、当事者であるドコモが主張している変更条項をドコモの主張よりもより限定的に解釈することによって不当条項でないと判示しているものである。判決は、本件変更条項の解釈についてドコモの主張ともなくす会の主張とも異なる解釈をしている。これは、判決は、当事者の主張に拘束されるとの原則(一般に弁論主義といいます)に違反していると考えられる。

 ドコモは、本件変更条項を同意の根拠として同意のある約款変更をしていると主張しているのであり、本判決は、本件変更条項がこのような同意の根拠にはなりえないことを明確に認識し、そのように判示しながら、ドコモのこの点の主張を無視して条項を限定的に解釈している。

 また、一定の約款変更が当事者の合意がなくても許される場合があるという結論は当事者間に争いはないが、その範囲に本件手数料条項などを含めて深刻な争いがある場合に、「一定の約款変更が当事者の合意がなくても許される」という限度で法理が確立しているといえるのか、大きな疑問がある。

 控訴審判決は、原審判決と異なり、約款変更をめぐる論点について概ねただしく認識しながらも、結論においてドコモを勝訴させるために、ドコモの主張をより限定的に解釈することによって、ドコモを救済している。ドコモの変更条項は本判決が認めるとおり、紛争を招く余地が多いにあるものであるから、ドコモの主張を前提にする限り、不当条項性を認定すべきであった。

以上

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